きみのおと


前は、筆談だったから、千秋くんも遠慮してこういう移動中のやり取りは千秋くんは傍観していることが多かったから。



「ちーくん?」




談笑しながら歩いていると、伺うような声が聞こえた。
“ちーくん”と呼ぶ声は、まるでこちらに向いているようで・・・。



「・・・・・・え、さ、皐月ちゃん?」




その声に反応したのは、千秋くんだった。
“ちーくん”
そういえば、千秋くんのお母さんがそう呼んでいた。




「やっぱり、ちーくん、久賀千秋くんだよね?」





千秋くんが反応するとホッとしたように声をあげた女の子。
同い年くらいの肩くらいまでの髪のほんわかした雰囲気のかわいらしい子だった。
控えめな印象を受けるその子は、千秋くんを見てうれしそうな笑顔を見せた。


胸騒ぎを覚えた。



「うん。・・・皐月ちゃんだよね?」

「うん。そう。伊永皐月(これながさつき)。よかった。覚えててくれたんだ。私、すぐわかっちゃった。ちーくんあんま変わってないから」

「そう・・・かな・・・」


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