きみのおと


私がこんな風にイジイジしている間にも、伊永さんは着実に千秋くんとの距離を縮めていっていた。
それは、伊永さんの姿を見なくても、なんとなく気づくほどに。



「千秋くんが、休み時間にスマホいじってるのって珍しいね」

「え、あ・・・。うん」



いつものお昼休憩。
食事を終えた後、千秋くんがスマホをいじっているのを見て不思議そうに亜衣が訪ねた。
亜衣は伊永さんの事を知らない。

遊園地の時には会っているけど、その後は亜衣は部活でいない時の出来事だったし。
このドロドロした私の感情をどう話していいか迷ったまま、なにも話せないでいた。


だから、千秋くんがスマホをいじる理由を知らない。



「最近よく触ってるよね」

「あ、ごめん。一緒にいる時にスマホ出すの失礼だったよね」

「え?あ、違うの。そういう意味じゃなくて。スマホを使うってことは使う相手がいるってことだから、最近千秋くん明るくなって変わってきたしいい友達ができたのかなって」




亜衣は、本当に純粋な想いで話してる。
でも、私は違う。

私は知ってるから。
そのスマホの相手が誰なのか。



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