きみのおと
「僕も、久しぶりにあのパン屋さんに行きたいって思ってた。一緒に行こう」
「うん・・・!」
よかった、断られなかった。
そのことにホッとする。
「じゃあ、帰ろう」
「うん」
嬉しい。
久しぶりにこんな風に千秋くんといられる。
もっとちゃんと言わなくちゃ。
自分の気持ち。
千秋くんといたいって。
千秋くんの事・・・。
「ちーくん!」
校門のところで、いつものように待っていたのは伊永さん。
ドキッとする。
そうだった。
この難関を忘れてた。
千秋くんに断られなかったことにうかれて、いつも待っている彼女の存在を・・・。
「今日も一緒に帰ろう」
「えと、あの、今日は・・・」
「え?」
千秋くんは、私の約束をちゃんと果たしてくれようとしているのか断ろうとしてくれる。
それが、すごく嬉しかった。
ちゃんと優先してくれる、その思いが。