きみのおと


「じゃあ、私あっちだから。メロンパン、食べたら感想教えてね」




大通りまで出ると、久賀くんに向き直りそう言った。
もう焦るのはやめよう。
友だちって、無理やりなるものでもないし。





「じゃあ、また明日」



そう言って笑って手を振る。
久賀くんは、なにやら考え込むような表情を浮かべているけど、気にせず背を向けて歩き出そうとした。



でもそれは、腕をひかれることにより止められてしまった。



「え・・・?」




驚いて振り向くと、久賀くんは少し困ったような顔をしていて。
なにか、訴えたいことがあるような表情。


でも、その唇は相変わらず固く結ばれていて言いたいことがわからない。


私は少し考えた後掴まれていないほうの手で鞄をあさり、中からスマホを取り出した。
メモ機能を出して久賀くんに差し出す。



「言いたいこと、ここに打って。そうしたら、わかるから」




そう伝えると、久賀くんは小さく頷いて私の腕を掴んでいた手を放すとスマホを受け取った。
懸命な瞳でスマホに文字を打ちこんでいる姿を見つめる。



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