きみのおと


「だ、だめだぁ」

「大丈夫?ほら、ティッシュ」

「うぅ~」



映画鑑賞後。
そういうのに弱いと言っていたしぃちゃんは、その言葉のとおり涙腺崩壊でボロボロの顔をしていた。

まさかここまで泣くとは思わず、驚いてしまう。
でも、こんな風に素直に感受性の強いしぃちゃんが羨ましい。



「最後の海でのシーンが・・・もう、だめだった・・・」

「うん。あそこ、小説でもすごくいいシーンだったんだ。小説のシーンを忠実に再現されてて、よかった」

「小説・・・、絶対読む」

「うん。僕んちにあるから、今日貸してあげるね」

「ありがとぉ」



愛らしい。
本当に、愛おしいと思う。

しぃちゃんを好きになってよかった。
こんなにも、可愛らしい愛しい人。



僕にはもったいないくらいのいい子。




「ちょっと早いけど、僕んちに向かってもいい?お母さんから、いつ?って催促がすごくて」

「うん。いこう。ごめんね、泣きすぎて」

「なんで?映画楽しんでくれたってことでしょ?僕は嬉しいよ」





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