きみのおと


トクン、トクン、と胸の音が聞こえる。
触れたしぃちゃんの頬が熱い。



「しぃちゃん・・・」



何度でも、名を呼んで確かめたい。
ここにいるって、側にいるんだって。


潤んだ瞳が、緊張の面持ちで僕を見る。
それ以上に緊張しながら引き寄せられるように顔を近づけていった。



愛しい思いが溢れれば。
もっと、もっと、と求めてしまう。




あと少し。
ほんの少しで、唇が触れ合う。




その時。




トントン
ノックの音が、響き渡った。



ビクッと身体を震わせ、勢いよく身体を反らした。



「ちーくん?デザートにケーキもってきたわよ」





能天気なお母さんの声が扉の向こうから聞こえてきた。
僕は盛大にため息を吐く。


しぃちゃんは、真っ赤な顔をして戸惑っている様子。
仕方なく僕は立ち上がり部屋の戸を開けると、お母さんからケーキの乗ったトレイを受け取った。




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