きみのおと


「今日は、本当にありがとう。長々とお邪魔しちゃってごめんね」



すっかり遅くなって、家の近くまでしぃちゃんを送っていった帰り道。
いつもより歩く速度の遅い僕たちは、ゆっくりと家路を歩く。



「しぃちゃんと一緒にいられて、僕は嬉しかったから」

「私も」

「お母さんに、付き合ってくれてありがとう」

「ううん。楽しかったよ」



静かな夜道に、僕たちの声だけが響く。
少しずつ近づくしぃちゃんの家に、少し寂しく思いながら。



「千秋くんって、ほんと、サラリと照れる事言うよね」

「え?そうかな・・・?」

「無意識とか、怖い・・・」

「え、ええ・・・」



なんのことだろう。



「気分、悪くしちゃった?」

「そうじゃなくて・・・!嬉しいけど、心臓がもたないんだもん・・・」




今日は、しぃちゃんの赤い顔をたくさん見れた気がする。
僕はただ、素直に思ったことを言っただけだと思うけど。



だって、溢れるから。
伝えたくなるから。



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