きみのおと
「こ、ここでいいよ。またね」
「うん。気を付けてね」
「うん。千秋くんこそ」
「うん」
ああ、もうついてしまった。
あっという間。
名残惜しくて、寂しいって思ってしまう。
また学校でだって会えるのに。
こんなに近くに住んでいるのに。
「また、デートしてくれる?」
「もちろんだよ。今度行きたいところ、また考えててね」
「うん。楽しみにしてる」
次があることそれが嬉しくて。
デートって言葉も否定されなかった。
それは当然かもしれないけれど。
僕が、しぃちゃんの彼氏になれたって、再確認できる。
「しぃちゃん。最後に忘れ物・・・」
「え?」
手招きをして、しぃちゃんが一歩近づいたのを確認して、迷わないようにチュッと口づけた。
触れるだけの、短いキス。
「っ、ち、千秋くん・・・」
「へへ・・・。さっきは邪魔が入っちゃったから」
照れくさく笑ってごまかしながらそう言った。
だって、触れたかったんだ。
そして、しぃちゃんのその反応が、見たかった。