きみのおと
そのパン屋に入ると、中もとても可愛らしい装飾。
中にあるパンは種類こそ多くはないけど、とても美味しそうなものばかりだ。
「あら、柊くん。いらっしゃい」
「・・・ああ」
店員の女の人が柔らかい笑顔を浮かべ親しげに話しかけてきた。
店員さんとももう顔見知りなんだ。
そこまで通い詰めてるって事?
「いつものでいい?」
「ああ。あと、あいつにもオススメのやつを」
「あら、柊くんのお友達?初めてね、連れてくるの」
「うっせ」
少し照れたような柊二くんの表情。
初めて連れてきてくれたんだ。
なんだか、嬉しい。
「君、名前は?」
「え、と、久賀千秋です」
明るく笑いかけてくれる女の人は、どこかしぃちゃんを思い出した。
なんだか、似てる・・・?
「私、春間由紀子(はるまゆきこ)。よろしくね」
「はい。お願いします」
恥ずかしく俯きながら答えた。