きみのおと
「少し、パンを見てもいいですか?」
「もちろんよ、ごゆっくり」
僕はパンを見るため2人からは少し離れ見て回る。
どれも本当に美味しそう。
「最近どうなの?怪我は、してないみたいね」
「別にいつもケンカしてるわけじゃねぇよ」
「そう?ま、でもしてないならいいけど」
柊二くんは春間さんと楽しそうに話していた。
柊二くんがあんな風に話すなんて。
それに、なんだか。
柊二くんの姿になんとなく、しぃちゃんに恋する自分に重なった。
・・・もしかして。
「おい千秋、いいのあったか?」
「あ、うん!これにしようかな!」
「ありがとう。それ、最近できた新作なの」
「そうなんですね。お願いします」
トレイにのせたパンを春間さんは袋に入れていく。
綺麗な所作を見つめながら、僕はさっき頭をよぎった事をもう一度思い返していた。