きみのおと
「お前の事、胡散臭いやつだと思ってたけどな。とんだ悪魔だな」
「なによ」
「なに夢見てんのかしらねぇけどな。あんたには千秋を傷つけることはできても、救う事なんて絶対にできねぇよ。残念だな」
私を抑え込みながら、冷たい声で柊二くんが言った。
皐月ちゃんはその気迫に一瞬たじろいだ。
柊二くんも、すっかりキレている。
「そ、そんなのなんであんたにわかるのよ!」
「お前の顔見てると虫唾が走る。さっさと消えろ。今度千秋や俺たちの前にその汚ねぇ面見せてみろ。本当に包帯とガーゼが必要な身体にしてやるぞ」
「な、・・・なによ!」
皐月ちゃんは、顔を青ざめさせて慌てたように踵を返し逃げて行った。
殴り飛ばしてやりたい。
あんな奴、人間じゃない。
「あんな子!本当に殴ってやりたい!」
「バカ。あんなの、殴る価値もねぇ。お前がその手を痛める価値なんてねぇよ」
「でも・・・」
それじゃあ、気持ちが晴れないよ。
こんな現実を突き付けられた今でも、まだ信じられない思いがある。
だって、そんなこと考えて実行に移す人がいるなんて。