きみのおと



千秋くんが教室を出て、始業のチャイムが鳴っても、私はそこから動けなかった。
涙は止まらないし、勉強をする気にもなれない。


もうすぐ期末テストだとか、夏休みが来るとか。
そんな事すらもう、どうでもよかった。




「しぃちゃん!」




終業のベルが鳴るまで結局そこですごしていると、ガラガラッと扉が開く音がして慌てた様子の亜衣が姿を現した。
私に駆け寄り、心配そうに覗き込む。



「千秋くんだけ戻ってくるし、授業終わっても戻って来ないから心配したよ・・・。千秋くんに聞いても答えてくれないし・・・。でも、教室の場所だけ教えてくれたから急いできたの」

「・・・亜衣・・・」

「なにかあったの?そんな泣き腫らした顔して・・・」




言葉にしたら、もう認めてしまうことになる。
でも、もう一人じゃ抱えきれないよ。





「・・・フラれちゃった・・・。もう、好きじゃないって・・・」

「・・・え!?」




亜衣は予想外だったのか声を上げ驚きを隠せない様子。
しばらく言葉も出せず固まっていた。




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