きみのおと


「きっと、もう来ないよ」

「え?なんでわかるの?」

「もう、僕は皐月ちゃんの中にある主人公の相手にはふさわしくなくなったから」

「ふぅん・・・。そういうものかな?やっぱり私には理解できない」




マンガの世界から抜け出せなかったのかな。
甘い甘い、マンガの世界。

現実は辛くて苦しいことも多くて逃げ出したいことばかり。
それでもその先に幸せな現実だってあることを、彼女はいつか知る日が来るかな。



僕にしぃちゃんがいるように、彼女にもいつかそんな人が現れればいいと思う。
そうして、自分がしたことの恥ずかしさを惨めさを知ればいい。





「しぃちゃんに会いたいな・・・」

「明日退院だから、迎えに行こうよ」

「うん」

「千秋の変貌を教えてやんねぇとな」

「へ、変貌って・・・」

「褒めてんだよ」




ケラケラと笑う柊二くんに、僕もつられて笑う。
僕が得たもの。
かけがえのないもの。




ずっと、護っていきたいもの。




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