きみのおと
教室は、すでに人が何人かいて賑やかだった。
新学期特有のソワソワした雰囲気。
既にグループはちらほらとできていて、固まって話をしている。
私と亜衣は黒板に貼られた席順の表を確認して、亜衣の席の側にとりあえず座った。
「進級って、毎回ドキドキするんだ」
「そうだね、クラス代わると雰囲気とかも変わるし」
「うん。でも、今年はしぃちゃんと同じクラスになれたから、よかった」
仲のいい子が全くいなかった時の絶望感といったらないもんね。
自分から積極的に話しかけるタイプじゃない亜衣にとっては、死活問題だろう。
とはいえ、私自身もそういうのが得意というわけではないんだけど。
「あ、雫じゃん」
「あ、おはよー。そういえば、名前あったね」
「そういえばって、ひどい」
教室に入ってきた女子が私を見つけ話しかけてくる。
中学時代の同級生の、菊池美恵。
高校入ってから疎遠だったし、すっかり抜けていた。