きみのおと
「交換ノート?でも、最初の方なんかへんだったけど。交換ノートっていうか、独り言みたいな・・・」
「中を見たの?」
「最初の方だけだよ」
まったくこの子は・・・。
呆れて言葉を失いながらも、ぱらっとそのノートを捲る。
確かに、知らずに読めば独り言のように思える綴られた言葉たち。
「これは独り言じゃなくて、お母さんとお父さんの会話なの」
「会話?」
「そう。秘密の会話みたいで、ドキドキするでしょ?」
「た、確かに。二人だけの秘密のやり取りね」
どこに感心しているんだか納得したように頷く志帆。
こういうところ、まだまだ子どもだなと思いながら私はノートを捲っていく。
「でも、このノートを使う必要がなくなってからは、普通の交換ノートとして使うようになったの。ほら」
途中から、私の綴る文字が増えた頁を見せながらそう言った。