きみのおと
「僕が愛する奥さんをなんと呼ぼうがいいだろう。それに、ちゃんと外では気を付けてるし」
「わかってるわよ。羨ましいだけ―!」
「え?」
千秋くんは私を相変わらずしぃちゃんって呼ぶ。
そして私も、二人の時には千秋くんて呼んでいる。
「志保も、そういう相手が欲しいんだって」
「え!?志保にはまだ早いんじゃないかな。もう少しゆっくり見つけても」
すっかり親ばかな千秋くんは、志帆の突然の発言に大慌て。
そんな千秋くんの慌てっぷりは見ていておかしい。
「そうだ、芹川ったらね、この前またケンカしたんだって」
「え?」
「それが、絡まれてる女の子を助けたらしいんだけど、それで停学喰らったらしいんだよねー。ほんと、馬鹿だよね、あいつ」
志帆が思い出したようにそう言った。
芹川・・・志保が言う芹川っていうのは、芹川衣織くん。
志帆の一つ下で同じ高校に通っている。
衣織くんは、柊二くんと亜衣の愛息子だ。