きみのおと
ふと、窓際の席を見る。
誰もが少なくとも2人とか、誰かと話をしている中。
たった一人、誰とも話さず、そこにいたのかと問いたくなるほどに存在感を消したような人がそこにいた。
窓際の一番後ろの席。
その彼のためにその場所が用意されたのではないかと疑ってしまうほどに、その景色と同化している。
存在を消すかのように。
閉ざされた世界に、彼はいた。
細身でおそらく長身であろうその体を小さく折りたたんで。
真っ黒な髪で、長い野暮ったい髪の毛で顔は隠れてて。
肩ひじをついたその彼の視線は、顔ごと窓の外へと向いていた。
誰だろう・・・。
見たことないや。
まるで周りに壁でも張り巡らされているみたい。
それなのに、なぜか目が惹かれた。