きみのおと
「春の季節が一番好き」
そうやって暖かな笑顔を浮かべるのは、二ノ宮さん。
2年生になって、初めてできた僕の友だち。
本当は、友だちなんていらなかった。
半ば強引になった友だちだったけど。
こんなにも、心がポカポカとまるでこの春の日差しのように暖かくなるなんて知らなかった。
「でも、桜もすぐ終わっちゃうね」
緑の葉が目立つ桜の木を見上げながらの二ノ宮さんは呟いた。
切なげで、どこか寂しそうだった。
中庭のベンチに、僕たちはいる。
今日は気分を変えてここでお昼を食べた。
教室だと、周りの視線がうっとおしいからと二ノ宮さんは笑って言った。