きみのおと
「げ、行くぞ!」
「なんだよ、あとちょっとだったのに!」
「バーカ!」
口々に文句を言いながら逃げ出した男たち。
助かった・・・。
「久賀くん、大丈夫!?」
その声にビクッとしてみると、さっきの声は二ノ宮さんの声だった。
男たちが去っていった方向をじっと睨みつけた後僕を見てにこっと笑った。
「あ、久賀くんもパン買いに行ってたんだね。私も。そしたら騒ぎが聞こえてさ」
明るい口調でそう言うと、いつの間にか手から落ちてしまっていたパンの袋を拾ってくれた。
さっきまでの恐怖が、和らいでいくのを感じる。
「でも久賀くん、ああいうのは逃げなきゃだめだよ。逃げるか勝ちって言うでしょ」