きみのおと
僕はスマホを取り出しメモ機能を呼び出して文字を打ちこむ。
『さっき落としちゃったけど。助けてくれたお礼』
そう打ちこんで二ノ宮さんに見せると、二ノ宮さんは一層強く笑った。
「だって、久賀くん、鞄から財布出そうとするんだもん。慌てちゃったよ」
そんなところも見られてたんだ。
なんだか恥ずかしくて俯いた。
「ん。やっぱりここのメロンパン、美味しいね!」
彼女の声が、彼女の笑顔が。
僕の絡まった心を優しく解いてくれる。
『二ノ宮さん、本当においしそうに食べるね』
スマホに打ち込んでみせると、今度は恥ずかしそうに頬を染めた。
「だって、美味しいから。・・・二ノ宮さんって打つのめんどくさくない?雫、でいいよ」
僕のスマホを眺めながら何気なしにそう言った。
雫、二ノ宮さんの下の名前。