きみのおと
逃げるが勝ち、逃げるが勝ち、逃げるが勝ち。
何度も何度も心の中で反芻する。
ギュッと鞄の紐を握りしめ走り出す。
後ろからしぃちゃんに駆け寄り、しぃちゃんの腕を掴んだ。
「えっ」
驚いたしぃちゃんが振り向くと同時に手を引っ張って走り出す。
「な!、逃げんじゃねぇよ!」
しぃちゃんの腕を離さないようにギュッと力を込め、足を前に出す。
逃げる。
逃げる。
追いかけてくる足音が、恐怖を蘇らせるけど。
僕が止まったら、しぃちゃんまでひどい目に遭ってしまう。
そう自分に言い聞かせた。
「ち、千秋くん!?」
状況が把握できていないのか、戸惑いの声が上がる。
気づくかわからなかったけど、首を何度も上下に振った。