きみのおと
すっかりと恒例となったあの公園に来ると、しぃちゃんはハンカチを濡らし芹川くんが殴られた頬を手当てしていた。
「助けてくれたのはありがとう。でも、逃げられたらよかったのに」
「逃げても撒けなかったやつが言う事かよ」
「そ、それは・・・」
芹川くんにはいろいろな噂があることは知ってる。
ケンカが強いのは、確かみたいだ。
「芹川くんは、なんであそこにいたの?」
「あ?・・・わりぃかよ」
歯切れ悪くそういう芹川くん。
「・・・もしかして、パン屋?」
「わりぃかよ」
そう聞くとしぃちゃんはケタケタと声をあげて笑った。
「ほんと、芹川くんって話してみると結構面白いよね」
「は?お前、バカにしてんだろ」
「してないよ。むしろ褒めてる」
言い合ってる二人を僕は傍から眺める。
そこに、僕は入ることはできないから。