きみのおと


「おいこら久賀。てめぇまで俺の事バカにしてんのか」

「バカになんかしてないって言ってるでしょ」



芹川くん、怒ってる。
頷いたのがいけなかったんだ。

話、聞いてなかった。




「ったく・・・。おい、久賀」




乱暴な声で呼ばれビクッとしながら芹川くんを見た。
芹川くんは片手でクイクイッと手招いて僕を呼ぶ。
戸惑いながらも、恐る恐る近づいた。




「お前、なかなかやるじゃん」




ニッと笑って芹川くんがそう言った。




「ヘタレそうに見えるのに。こいつを連れて逃げようとしたところは褒めてやるよ。ま、結局俺のおかげだけどな」

「・・・芹川くん、結局それが言いたかっただけでしょ」




呆れたようなしぃちゃんの声。
だけど僕は、凄く嬉しかった。


怒られると思ってた。
僕は、芹川くんみたいにしぃちゃんを護ることができなかったから。



< 88 / 418 >

この作品をシェア

pagetop