きみのおと
「おいこら久賀。てめぇまで俺の事バカにしてんのか」
「バカになんかしてないって言ってるでしょ」
芹川くん、怒ってる。
頷いたのがいけなかったんだ。
話、聞いてなかった。
「ったく・・・。おい、久賀」
乱暴な声で呼ばれビクッとしながら芹川くんを見た。
芹川くんは片手でクイクイッと手招いて僕を呼ぶ。
戸惑いながらも、恐る恐る近づいた。
「お前、なかなかやるじゃん」
ニッと笑って芹川くんがそう言った。
「ヘタレそうに見えるのに。こいつを連れて逃げようとしたところは褒めてやるよ。ま、結局俺のおかげだけどな」
「・・・芹川くん、結局それが言いたかっただけでしょ」
呆れたようなしぃちゃんの声。
だけど僕は、凄く嬉しかった。
怒られると思ってた。
僕は、芹川くんみたいにしぃちゃんを護ることができなかったから。