きみのおと

逃げるが勝ちっていったしぃちゃんの言葉を反芻しながらただ逃げる事しかできなくて。
僕がもっと強くて、立ち向かえていたとしたら。

芹川くんみたいにしぃちゃんをかっこよく守れたのかなって。



でも、芹川くんは、そんな僕を偉いって褒めてくれた。




｢・・・は、お前、なに泣いてんだよ！」



ギョッとしたような芹川くんの声に、ハッとして頬に触れると僕の頬は濡れていた。
なんでだろう。

悲しいわけじゃないのに。
嬉しいんだ。



さっきまで、なにもできなくて、二人みたいに話もできなくて沈んでいた気持ちが。
芹川くんの言葉で救われた気がして嬉しいんだ。



泣いていることに気づいたら余計にポロポロと溢れだす。
手で拭うけど、とめどなく頬と手を濡らす。




｢千秋くん？どうしたの？・・・どっか痛い？それとも・・・｣



心配そうなしぃちゃんの声に、僕は首を横に何度も振った。
何度も振って、必死に涙をぬぐう。




僕はきっと。
本当は誰かに認めてほしかった。



きっと、誰かに僕を見つけてほしかったんだ。