きみのおと
「綺麗な目、ねぇ」
しみじみとした声が隣から聞こえる。
芹川くんの声だ。
一緒にお昼を食べていたところだった。
芹川くんは相変わらずパンを食べていて、そういう僕もパンだけど。
「お前はもっと背中をピシッと伸ばして堂々としてろよ」
芹川くんは、言うことが厳しい。
でも、悪意があるわけじゃないってわかった。
僕が今まで感じてきた悪意とかとは全然違うのだ。
だから、芹川くんの事は、今はもう嫌いじゃない。
「控えめなところも、千秋くんなんだから。人にはそれぞれ良さがあって、違う人なんだから。芹川くんの、口が悪くてがさつなところだって、芹川くんの個性でしょ」
「お前って、いっつもそいつの肩もつよな」
「肩もつとかそういう事じゃなくて、事実でしょ。ていうか、芹川くんがケンカ腰だからじゃん」
「はぁ?もともとこういう喋り方なんだよ、わりぃか」
芹川くんとしぃちゃんは相変わらず言い合いをする。
そういう時は決まって胸がソワソワする。
僕も・・・。
そんな小さな願いが胸に浮かんで。
でもすぐに、無理だってハッとするんだ。