お嬢様と執事の不器用なちょっとした話
「それは…!」



違う、と言い掛けて捗拵は止まる。


纏と庵が両思いなのは2人の言動を見聞きしていれば、鈍い捗拵でも分かる。



しかし、自分が好きとは言ってはいけない気がした。


それに、他人の自分が好きと言っても信じてくれない気もした。



不器用で思いやりがあり過ぎるこの2人は。



「錺禰様は蔵織様のことを、とても大切に思われてるのですね。ですが、蔵織様は錺禰様のことを我が儘で迷惑、仕事の一環でしかないと思ってる。そういうことですよね。」


「え、ええ……まぁ…」



真顔で詰め寄る捗拵に、驚きのあまり少し纏は引きぎみだ。



「私が悩んでるといつも祖父が言ってくれました。『人生どうにも出来ない事がある。解決策など絶対ない時もある。だが一緒に悩む事は出来るんだ。』」



解決法が例え見付からずとも、祖父が居たから捗拵は何度だって前を向けた。



「錺禰様の決めた事に反対する方はあまりいらっしゃらないと思います。ですが、私は錺禰様が今なさってる事は間違ってると思います。お父上様の人生ではなく、錺禰様の人生です。一度きりの人生なんです。結論を出すのはお二人で悩んで考えた末ですよ!」
< 10 / 19 >

この作品をシェア

pagetop