お嬢様と執事の不器用なちょっとした話
「これはお六櫛って言いまして、有名な伝統工芸品なんですよ。」


「フォーチュンクッキー作ったのですが、食べませんか?」



「そのネックレス、アレキサンドライトっていうんですよね。」


「セーム皮っていいらしいですね。」



「あのシミ、顔に見えませんか?シュミラクラ現象っていう名前なんですって。」



捗拵が決めたことは、身に付けた雑学で纏との距離を縮めよう作戦だった。



庵は追い返される毎日であり、捗拵も距離を縮められないまま今日で6日目。



ただ捗拵には続ける根性だけ、寧ろ根性しか無かった。



「貴女も暇じゃないでしょう。自分の仕事しなさいよ。怒られてるの目に見えるし。それにね、お客に言うなら謝罪じゃなくて感謝の方がいいわ。」



すみません
ごめんなさい
申し訳ありません



頭が纏で一杯になるあまり右往左往することが増え、捗拵は謝ってばかりだった。



ありがとうございます
助かりました
嬉しかったです



「謝罪も大事だけど、感謝の言葉の方があったかい気持ちにならない?」


「はい!申し訳ございません、ありがとうございます!」



捗拵の変な返答に纏は思わず笑う。
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