お嬢様と執事の不器用なちょっとした話
「錺禰は不要などでは…!お仕事は完璧ですし、お綺麗ですし、コンシェルジュにも気を配っていただいて…。絶対お飾りでも不要でもありません!」


「ふふっ、ありがとう。」



16歳に言う褒め言葉ではないような気がするが、必死で否定する捗拵に社交辞令ではないことだけは伝わってきて、纏は嬉しくなる。



「大体、結婚出来る歳になったからっていきなり婿探しって一体何時代よ。結局のところ継いで欲しいだけで、父は私のことなんて見てないと思わない?」



纏に相談すら無く、取引先などの大企業の御曹司ばかりを紹介された。



「跡継ぎ問題はどこのご家庭にもあるようですね。蔵織様はお仕事が落ち着かれたからと仰っていましたが。」



まだ言われてないが周りを見てるとそろそろ自分も、と思うだけで仕事が楽しい捗拵は気が重くなる。



「そうなのよ。私のことより自分の妻でも探せばいいのに。仕事に託つけて私を庵達に押し付けておいて、今更取り繕うように私の為って言われてもね。」



確かに、お金は年々増えて庵や使用人も居て、衣食住に何ら不自由は無かった。



ただ、一番欲しかった父親からの愛情を感じることは一度も無かった。
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