朝焼け
忙しかった夏休みもやっと終わろうか、
という頃に由美から電話があった。

「雄君が、薫が会ってくれないって淋しがってるよ?」


心臓がドクン、と跳ね上がる。




由美に動揺を悟られないように、



「夏休みが終わったら、また遊ぼうよ、って雄君に伝えて?」


「ダメ。毎日メールしてるんでしょ?自分で言いなさい。
その方が雄君喜ぶよ?」

由美が厳しい声で言う。

確かに、それはその通りなんだけど。



あいにくと私には
「好きな人」
に、自分からお誘いする勇気なんて少しも無い。

「男友達」になら「遊ぼうよ」なんて軽く言えるのに。



夏休みもやっと終わり、風が少しずつ冷たくなってくる。


私は雄に「遊ぼう」と言えないままだった。


2人で居ると、欠点だらけの自分をすぐに見破られるだろう。


それで嫌われたら、と思うと、怖くて言えない。



由美に電話で助けを求めた。

「雄君に会いたいけど、2人きりだとどうしていいか分からない」

と言うと、

「仕方無いなぁ。今週の土曜日休み?」

と聞いてくる。

「アリガトウ、由美!!土曜日休みだよ!!」



やっと雄に会える。


由美が笑いながら、
「分かりやすい奴。」
と言った。



…バレてたのか。


「おシャレして行かないとね~♪」

と、何故か由美もテンションが上がっている。

「頑張ります。」

小さな声で返事をした。

「じゃあ土曜の昼頃家に迎えに来てね~♪」

と約束をして電話を切った。



早く土曜日になればいいのに。


でも
雄に会うことが怖い。


雄が私を「男友達」とみなしてしまっていたら?

それでも。

それでも側に居られれば
それだけで。


幸せなんだけど…




「恋人」
として側に居るのはやっぱり無理かなぁ?




多くは望まない。

望めない。





全てが欲しいと

望んでしまった時、



きっとー…




全てが終わってしまう。

そんな気がする。
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