朝焼け
その時、来て欲しくも無い電車がスルスルとホームに入って来た。

電車が動かなくなったりすれば薫を離さなくて済むのに。


ベンチから立ち上がり、薫と由美が電車に乗り込む。


そして、発車までの短い時間を楽しむ。



薫は俺の貸した上着を着てくれていた。

ふ、と目が合う。

思わずゆっくりと唇が動く。




声には出さなかったけど。



でも。




薫には通じたみたいだ。


顔が赤くなってた。



すると、薫の唇が動く。



「ワタシモダイスキ」



声には出さないが、ゆっくりと動かす。



…どうして目頭が熱くなるんだろう。

情けないな。

そんな2人の間を割くように、けたたましい電子音を鳴らしながら、無慈悲にもドアを閉めて、ゆっくりと走り出す電車。



そんな電車の後ろ姿を見つめる俺を見て、晃が

「ほら。行くぞ。電車はもう見えないから」

と言ってきた。


俺は少しでも多く、薫の側に居たいんだ。

2人で居る時だけでも時間が止まらないかな。
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