朝焼け
私が顔を上げた時に見た物は


電車がスルスルと、ホームから出て行くシーンだった。


呆然と電車を見送るしか無かった。



雄は電車の時刻表を見て、

「次の電車は…ゴメン、40分後だ」

とうなだれた。


「気にしなくていいよ。雄君と一緒に居られる時間が増えたんだし☆」

と、言うと

「もう一度、抱き締めていい?」

顔を真っ赤にしながら聞いてくる。



「聞かなくていいよ?答えは決まってるから」

と、顔を少し背けながら答えた。



雄の腕に抱かれながら、あまりの気持ち良さに惚けていた。



「こうしてると、何か落ち着くよね。
…って、俺だけ?」




「私も落ち着くよ。ずっとこうしていたい…
何てね」



と、笑顔で答える。






その時。




「あっれ~☆薫と雄君じゃん!
何やってんの~??」



と、由美の声がした。



慌てて離れる2人。



「由美、お邪魔しちゃダメだよ」


晃の声。



「ゴメン!!2人を見つけて思わず声かけちゃった!」



顔の前で手を合わせる由美。




「別に何もしてないから大丈夫!!」



私と雄は声を合わせて言った。



そして、顔を見合わせて笑った。




その時、電車がホームに入って来た。



私と由美は一緒に電車に乗り込み、いつもの様に雄の上着を受け取る。





雄は、いつもよりも淋しそうな目をしていた。



私もそうだったに違いない。
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