朝焼け
「もう11月だよ?」


「だから泳ぐの?って聞いたの♪」



「冬の海って、人も少ないし、キレイじゃない??
私、彼氏が出来たら行ってみたい、って思ってたんだけど…」




と、そこまで言った時だった。




車が停まる。




「…実は、俺もそう思って、最初から海に向かってたんだよね」




車から降りて、2人で冬の海岸を歩く。




潮の香り。



そして、隣りには雄が居て。


「ひゃあ!!」

砂に足を取られ、転ぶ私。


「だっ、大丈夫!?」



「~…笑いながら聞かないでよぅ!」




「ハイ、手を貸すよ」



ドキッとした。




雄の手に、初めて触れる事が出来る。




心臓が…



苦しい位に暴れてる。




雄の大きな手に、触れる。



握る。




と、同時に優しく引っ張られる。



「あ~あ~、こんなに砂つけちゃって…」



パタパタ、と砂をはらってくれる雄。



「…お母さんみたい」



と呟くと、




「えっ?!俺、彼氏から保護者になっちゃってる?!それって昇格??降格??」



本気で慌てている。


ふと私の左手を見る。

「…何で巻貝握り締めてんの??」



え??



と思い、左手を見ると、本当に巻貝を持っている。


転んだ時に掴んだようだ。



「本当だ。でも割れたりしてない、キレイな巻貝だ♪」



「耳に当てたら波の音がするよ♪」



雄が言う。



「…ここで耳当てたら、海岸だから波の音聞こえるのって当たり前な気がする…」



と、現実的な事を言いながらも眼を閉じて耳に当てる。




「ザザーン☆」



雄が波の音を真似て言う。



「雄君の声がする」



2人で笑った。




「陽が暮れてきたね。そろそろご飯食べに行こう」


雄と再び車に乗り込む。
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