朝焼け
その時電車がスルスルとホームに入って来た。
4人はベンチから立ち上がり、私と由美は電車に乗り込む。
そして、発車までの短い時間を楽しむ。
私は雄から借りた上着を着て、雄を…見つめた。
ゆっくりと雄の唇が動く。
声には出さないように。
でも。
私には分かった。
雄は由美達に聞かれないように
「ダイスキ」
と言ったのだ。
嬉しくて、涙が出そうになるのを堪えながら、
私も言い返す。
「ワタシモダイスキ」
声に出さないように、ゆっくりと。
ちゃんと雄に伝わったかどうかは一目で分かった。
雄が照れたように笑ったから。
そんな大切で愛しい2人の間を割くように、電車が、けたたましい電子音を鳴らしながら、無慈悲 にもドアを閉めて、ゆっくりと走り出す。
もう少しだけ。
雄の照れたように笑う顔を見て居たかった。