朝焼け
電車の中で由美が

「上手く行ってるみたいだね」

と、横目で言ってきた。

「え?あ、うん。何で?」

と聞くと、由美が金魚のように唇をパクパクとさせる。


「見っ、見てたの?!」


「やっぱり??そうかなぁ、とは思ってたんだぁ~。イイなぁ、繋がってる、って感じ」


うっとりとした顔で由美が言う。


「て、言うかさ」

由美がグイっと身を乗り出す。


「本っ当に何も無かったワケ?」

まだ疑っていたのか…


「本当に何も無かったの。
抱き締めてイイか聞かれたから、イイよ、って言って抱き締められて。
気付いたら寝ちゃってた☆」

呆れ顔の由美を見て、続ける。

「あ、でも。胸に顔を埋めて寝るのって苦しいんだね。息が出来なくてさぁ~」


と、言うと由美が冷ややかな眼で

「無邪気すぎ。
まぁ、雄君が本当に薫を大切にしてるのが分かったからイイけど。
あそこまで馬鹿正直に約束守るなんてさ。
よっぽど薫が大事なんだね」

と言ってきた。


昨夜、雄が壊れ物のように優しく抱き締めてくれたのを思い出す。
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