狼な彼と赤ずきん
「お前、よく寝てたな。もう真夜中だぞ」



ガラスのコップに汲んだ水を、彼は私に差し出した。


そういえばひどく喉が渇いている。


私は水を一気に飲み干し、ため息をついた。


冷たい水が体のすみずみまで浸透すると、少しは気持ちが落ち着いたように感じる。



「狼さん……私の怪我の手当てをしてくれたの?」



「おうよ」



彼はぶっきらぼうにそう答え、ベッドに腰をおろした。



「今、話せそうか?」



私は首を縦に振って頷いた。



「じゃあ単刀直入に聞くが、何でまた、俺に食われようなんて思ったんだ」



「それは……」



答えようとしたが、彼に理由を尋ねられた途端に辛い現実を思い出し、私の目からは意図せず涙がこぼれ落ちてしまう。


ひくひくとしゃくり上げる私を見て彼はおろおろと手を伸ばし、それから優しく背中を撫でてくれた。
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