狼な彼と赤ずきん
「アドラン様!不浄の森の制圧、おめでとうございます!」



「気の毒な少女を連れ戻したアドラン様は、まさにこの国の英雄!」



「次期騎士団長にふさわしい男!」



皆が次々に帽子を投げ、凱旋を祝っている。


私はそれをぼんやりと生気のない目で見つめていた。


もう、私はあの森には戻れない。


好きでもないアドランのもとで、ずっと暮らす事になるのだろう。


短いけれど楽しかった生活は、戻ってこない……。



まるで感情を失ってしまったかのように、私の心にはぽっかりと大きな穴があいていた。
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