狼な彼と赤ずきん
ベッドの上で、ゆっくりと視界を閉ざしていく。


彼が私を押し倒し、体の上にのしかかるのを感じた。


獣の息遣いが首筋にかかる。


きっと、動脈を食いちぎられるのだろう。



「赤ずきん――」



硬い牙が首に当たった。


そして。



「……ん」



私が想像していたような痛みはなかった。


それどころか、柔らかな感触が首から顎、頬にかけて徐々に顔へと上ってくる。


最後に――唇の上で、ちゅっとひとつ音がした。


私は驚いて目を開いた。



「ふふっ」



いたずらっ子のように笑う狼が、そこにはいた。



まさか……キスをされた?



心臓がドキドキと、さっきよりも大きく暴れ始める。


顔に熱がのぼり、真っ赤になったのを自分でも感じた。


キスなんて、初めてだったから。
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