狼な彼と赤ずきん
彼の顔を覗き込み、再度肩を揺さぶるが、彼は明らかに目を逸らしてしまう。


昨日の彼とのあまりの変わりように戸惑う私。


すると、山猫が声をかけてきた。


タキシードなどの正装でぴしっと決めている者が多い中、彼だけはよれよれのシャツを着てラフな格好をしている。



「あいつ、照れてるだけじゃねえの。気にすんなって、奥さん」



馴れ馴れしく私の肩に腕を置いて、「あんまり照れてばかりだと俺が取っちゃうぞ」と狼をからかう山猫。



「えっ、だから違うって……」



私が狼のお嫁さんになったという事実はないし、何より、私を徹底的に無視する彼の態度が、照れているというよりは私を避けているように感じられたのだ。



「狼さん……」



彼は何を考えているんだろう。


十年前は私を食べると言ったかと思いきや、昨日は突然キスをして。


今日は勝手に結婚パーティを開いておいて、そのくせ私のことを無視するなんて。
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