狼な彼と赤ずきん
翌朝。


山猫の言うとおり、単に狼が照れていただけならいいのだが、やはりそれは違ったらしい。


起きて身支度をして、リビングで顔を合わせても彼は私に声をかけてくれない。


そればかりか、さりげなく新聞で顔を隠してしまう。



「おはよう、狼さん」



「……おはよう」



こちらが声をかけると一応挨拶は返ってきたが、それ以上の会話は展開しそうにない。



私はふとテーブルに目をやった。


熱々の湯気をのぼらせる、はちみつ色のホットケーキが準備されている。



「これ……」


「食え」



ぶっきらぼうに答える狼。


きっと、彼が作ってくれたのだろう。
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