狼な彼と赤ずきん
住人の中で本が好きなのはフクロウだけだし、その彼も本は家で読むのが日課だから、行けばきっと貸し切り状態になるだろうと聞いた。


私は本が好きだから、狼に迷惑をかけないように日中の時間を潰すにはちょうどいい場所だろう。



「そうか。行ってこい」



相変わらず、短い返事。


私はため息をついて、家を出ようとした。


その時。




「夜は真っ暗になるから、気をつけろよ」




彼が一瞬だけちらりとこちらを見て、忠告してくれた。



たったそれだけで、どきっと胸が高鳴った。



やっぱり、彼は優しいんだ。


優しくて、冷たくて、どうしたらいいか分からない。
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