狼な彼と赤ずきん
しかし冒険ものだと思ったその本は実際のところ、ぶっきらぼうな彼氏と、それに振り回される女の子の恋愛小説だった。



ぶっきらぼう――。


脳裏に、狼の姿が思い起こされる。


私はぎくっとして、その姿を振り払うように首を振った。


もともと読書が大好きな私は、一度本を読み始めたら止まらないはずのだ。

本の世界に没頭して、ほかの事なんて考えられないのが当たり前。


たまにはほかのことに興味を持ちなさいと、祖母に心配されていたほどだ。



それなのに、なぜ今日は狼のことを。
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