狼な彼と赤ずきん
本に集中するべく、私は活字を凝視しながら夢中でページをめくった。


しかし読み進めれば読み進めるほど、狼のことを思い浮かべてしまう。


そして、ぶっきらぼうな彼氏の態度に悩むヒロインの女の子が、まるで自分のように思えてきた。



「狼さん……」



ぽつりと彼の名をつぶやく。


狼さん、狼さん、狼さん、狼さん。


いつの間にか頭の中は、彼のことで埋め尽くされていた。



そして、私は気づいてしまった。



この本のヒロインの女の子も、私と同じように、そのぶっきらぼうな彼氏のことばかり考えているということに。



それって――。
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