狼な彼と赤ずきん
どれだけの時間が経っただろうか。


――雨の音がする。


それも、ぽつぽつと降る雨ではない。


ざあざあと絶え間なく土を打つ激しい音からするに、バケツをひっくり返したようなひどい土砂降りのようだ。


遠くでは雷鳴が響いている。


私ははっとして飛び起きた。


図書室の古びた壁時計を見ると、時刻は夜の六時を回っている。


ただでさえ薄暗い森が、雨のせいで来た道がわからないほど真っ暗だ。


一歩踏み出せば吸い込まれてしまいそうな暗闇が、そこにはある。



「しまった……!!」
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