狼な彼と赤ずきん
彼は大雨の中をすたすたと歩いて行ってしまう。


私は慌てて後を追いかけた。



「狼さん、ごめんなさい」



「分かりゃいいんだよ」



「あの、迎えに来てくれて、ありがとう」


「別に」



彼は短く返事をして、そっぽを向いてしまった。


まるで、これ以上はお前と話したくないとでも言うように。


私の胸が、またきゅんと痛くなる。


さっきは迎えに来てくれて嬉しいと思ったけれど、やっぱりこうやって冷たい態度をとられると辛い。


時おり見せる優しさが、余計に戸惑いを煽る。


こんなことなら、最初からそっけなくされた方がどれだけましなことか。


中途半端な優しさはかえって残酷だ。


私はそれ以上何も話すことができずに、二人で沈黙したまま家に帰った。
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