狼な彼と赤ずきん
でも相変わらず悩みもある。


狼が優しくしてくれたのは、再会した日と雨が降った日だけで、それ以来はやはり私に見向きもしないのだ。


もちろん、最低限の会話はする。

しかし声をかけるのはいつも私からだし、視線は全然合わせられない。


確かに、食事も寝る場所も提供してくれるから、こんなにありがたいことはないんだけれど。



「私、やっぱり嫌われてるのかな……」



きっと、彼は私の世話をするのが面倒くさいんだ。


居候をしている私のことを、厄介者に思っているんだ。


でも、だけど、それならどうして、あの日私にキスなんてしたのだろう。


どうして、ずぶ濡れになってまで図書室に迎えに来てくれたのだろう。
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