狼な彼と赤ずきん
「狼さん、可愛い」


彼に抱きついてにこっと笑うと、彼は顔を赤らめて怒ったような口調で言い返す。



「可愛くねえよ。俺は怖い狼なんだからな。俺が睨めば、猛獣だって犬っころだ」



「狼さんだって猛獣でしょ?」



「うるせえ」



鼻を鳴らしてそっぽを向く彼にキスをすれば、彼は私を見てぎゅっと抱きしめてくれる。



「さっさと寝ろ。今日からお前の寝る場所は俺の腕の中だからな。異論は無しだ」



どこまでも強引な彼に、私はまたくすっと笑みをもらし、彼の腕のぬくもりに包まれながら穏やかな眠りについた。



ようやく。


ようやくすべてが解決して、私たちにはきっとこれから、平穏な暮らしがやってくるはずだ。
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