狼な彼と赤ずきん
そして今日は狼の当番なのだが、彼は畑に来て十分もたたないうちに「キスをしたい」などと言い出して、今、私は太い木の幹に押し付けられている。


嫌だ嫌だと言いながらも、心の底ではそれを望んでしまっているから、私も本気で抵抗することはできない。


完全に彼のものになってしまったと実感させられる。


あっさり彼の言いなりになってしまう自分を嘆くべきか、それとも彼にここまで愛されているのだと誇りに思うべきか――。



満足するまでキスをすると、彼はようやく私を解放してくれた。


「さ、仕事するぞ。ほら、へたり込んでないでさっさとこっち来い」


まるで他人事のように彼は私を呼びつける。
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