狼な彼と赤ずきん
私は、思い出したくないことを思い出してしまった。



――そう、どれだけ彼らと仲良くなっても、私は人間、彼らは獣人。


基本的に種族が違うのだ。


だから、分かり合えることもあれば、分かり合えないこともあるだろう。


今回の話は、きっと私が首を突っ込んではいけない、内輪の話なのだ。



「分かった……」



普段ならそれでもと食い下がるところだが、今回は彼らの尋常でない雰囲気を感じ取って、私は家の中に引っ込んだ。


窓の外の代わり映えのしない景色を眺めながら、話し合いが終わるのを待つ。


盗み聞きしようとも思ったが、よそ者である私が知ってはいけないことを知ってしまうのは後々よくないことになるだろうと思って、家の中で大人しくすることにしたのだ。
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