狼な彼と赤ずきん
そして次の日から、本当にひとりぼっちの毎日が始まってしまった。


狼をはじめとする森の住人たちは、朝早くに家を出て森を巡回しているようだ。


まるで、敵を警戒しているかのように。


それは、リスの言った「剣を持ったでっかい人間」と関係のあることなのだろうか。



家にいる間退屈しないようにと、狼が図書室から持ってきてくれた本に手を伸ばす。


私の好きな冒険小説だ。


しかし、ページをめくってもめくっても内容が頭に入ってこない。


この森に何か不吉な事が起きようとしていると、本能的にそう感じているからだ。


本など楽しんでいる余裕はない。



窓の外を、誰かが駆けていく音がする。


私は、そっと外に目をやった。
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