狼な彼と赤ずきん
そこにいたのは獣人などではない、れっきとした人間だった。


しかも、ただの人間ではない。


アドランの父が率いる部隊の制服を着た、屈強な騎士だった。


言い方は悪いかもしれないが、あまり目つきが良くない。


獲物を探すハイエナのような目をしている。



「なんで、人間がこんなところに……」



森での生活に慣れてしまった私は、逆に人間を恐れるようになってしまったようだ。


びくっと体を震わせ、急いで机の下に隠れる。


狼に言いつけられていたからだ。



もし武器を持った人間を見かけたら、すぐに隠れるように、と。




リスの言葉は本当だったのだ。


理由は分からないが、この森には、騎士が来るようになってしまった。
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